「川井」との再会…は高校1年の春にさかのぼる。
市内にある某県立高校に合格し、気持ちもなんだか昂ぶっていたそのとき、隣の席に座っていた女子の顔に見覚えがあった。
入学早々の緊張感か…、見間違いの可能性もあるが…
でも、どっかで見たことのある顔だった。しかし、呼ばれた名前に思い出すところのものは無かった、というのが気にかかった。
帰りの会もしゃんしゃんと終わり、彼女はそそくさと帰ろうとしていた。
「ちょっと…おねえさん、どっかであったことがあったか…あっ……。」
顔を真正面から見て、私はすぐに思い出した。その刹那、彼女の口から
怒号が発せられた。
「水谷じゃなくて、川井だって、何遍言ったら…あ…。もしかして??きみは隣にすんどった…。」
その瞬間、だいたいを悟った。
水谷信乃、いや、川井信乃とは、7年ぶりの再会だった。かなり親しくしていた記憶があったが、小学生の話である。下の名前で呼び合った覚えもなく、名前で思い出せる訳が無かった。
わしの家族がオヤジの仕事の都合で引っ越してから以来であった。なぜ苗字が変わっているのか。なぜあの反応だったのか。私は深くは聞かなかった。しばしの沈黙に、「川井」の目が湿っていたのが確認できた。

広島にはめずらしく、春は名ばかりの冬の終わりの寒さ、校門には降り積もった角砂糖がようやく溶けだしていた。
シュールにしようと思ってシュールにしようと思った訳ではないのだが…。勝手に筆が進む…。
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そうかぁ
2008/04/03(Thu)22:32
No.1|by ばく|
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